レビュー
dreamer

dreamer

4 years ago

4.5


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白いドレスの女

映画 ・ 1981

平均 3.0

"美人の人妻とうだつのあがらぬ弁護士が織りなす疑心暗鬼の駆け引きを描く、官能と犯罪のサスペンス・ドラマの傑作 「白いドレスの女」" この映画「白いドレスの女」は、うだつのあがらない弁護士が、官能的な美人の人妻と深い仲になり、彼女と共謀して夫を殺害し財産の横領を企みます。 そして、この計画はうまく成功して財産を手に入れますが、しかし----というストーリーで、現代に甦ったファム・ファタールの狂おしい妖しさと、この作品が監督としてのデビュー作となった、脚本家出身のローレンス・カスダンの流麗な演出力が、ねっとりと絡み合った、実に官能的な犯罪サスペンスの傑作です。 「BODY HEAT」という原題通りに、我々観る者の心まで熱くする官能美が立ち込めています。 主人公の弁護士ネッド(ウィリアム・ハート)と人妻マティ(キャスリーン・ターナー)の二人の駆け引き、ネッドの疑心暗鬼、マティに対する疑惑などを幾つもの伏線を張りめぐらせて描き出し、ジワリジワリと真綿で首を絞めつけるようなサスペンスを盛り上げていきます。 完全犯罪だと思われていたものが、ちょっとした計算外のハプニングからガラガラと音をたてて崩れていくまでのプロセスは、まるで謎解きゲームのような面白さに満ち溢れています。 とにかく、緻密に計算されたドラマ構成であり、女の仕掛けた罠にはまってのっぴきならない事態に墜ちこむネッドの姿を、感情というものを一切排して、冷ややかなタッチで描き出したところが、この作品の素晴らしさだろうと思います。 そして、ネッドが白いドレスをまとったマティに出会う最初のシーンが何といっても、とても印象的で、フロリダ南部のうだるように暑い夜の闇の中に、くっきりと浮かび上がる純白のドレス。そんなマティを一目見て、ネッドはすっかり魅了されてしまいます。このシーンの演出は、まさに息をのむような官能的なムードをよく表現していて、実に見事です。 こういう女性の官能的で妖しい魅力と、人間の理性を狂わせるような真夏の熱気を、鮮やかに表現した演出力をみても、ローレンス・カスダン監督は、非凡な才能の持ち主だと思わざるをえません。 純白のドレスが似合う美女が、実はドス黒い心を持っていたなんて、カスダン監督の洒落っ気のあるセンスが光ります。 ネッドとマティのパズルを思わせるような虚々実々の駆け引きを、かなりわかり易く処理して、最後には完全犯罪が失敗に終わった事を暗示して----。 そのあたりの演出は多少荒っぽいなとも感じますが、しかし、全編を通してのスムースな語り口とシャープで非情ともいえる演出感覚が、我々観る者を文句なしに画面にクギづけにしてしまうような、ピリピリとした緊張感をにじませていると思います。 それと、印象に残ったのが、ネッドの友人の検事と刑事の描き方で、フレッド・アステアの大ファンで、いつもアステアの真似をしているダンディな検事(テッド・ダンソン)。 そして、口数のすくない実直な黒人刑事(J・A・プレストン)。 この二人は、親友としてネッドの身を気づかいながら、彼の身辺に容赦なく捜査の手を伸ばしていくという、型にはまらないユニークな人物像として描いていて、この二人の存在が、この映画の大きなアクセントになっていると思うのです。 弁護士のネッドを演じたウィリアム・ハートは「蜘蛛女のキス」でアカデミー主演男優賞を受賞した、演技派の性格俳優ですが、この映画でも正義のためには損得抜きで庶民を守ろうというタイプではなく、むしろ小利口に立ち回って金儲けをしようとする、女好きの、そういう一癖のある人物を生き生きと表現しているところが見ものです。 また、ネッドを色仕掛けで夫殺しの犯罪に引きずり込む魔性の女マティを演じたキャスリーン・ターナーは、妖しい美貌とスラリとした肢体で男を狂わす魅力を、実に魅力的に発散させていて、もう惚れ惚れするほどの素晴らしさです。