レビュー
岡本喜八が監督を務めた、1971年公開の戦争映画。 『日本のいちばん長い日』を観て私が最も感服させられたのは「起こる事態をひたすら即物的に捉えることでそこにドラマ性が生まれる隙を一切排し、戦争の不条理性と暴力性だけを鮮明に映し出す」という語り口でしたが、本作ではその手法がそのまま戦場に置き換えられています。つまり劇中ではヒロイックな活躍も映画的カタルシスも全くもって皆無、劇中の言葉を借りるならば「阿鼻叫喚の地獄」が真正面から映されるだけの2時間半でした。特に強烈な印象を残すのはやはり住民たちによる集団自決ですが、そんな悲惨極まりないシーンでさえ本作は流麗な音楽とナレーションによってダイジェストで紹介します。この首尾一貫した描写のリアリズムとドライな語り口、凄いです。そして何より『日本のいちばん長い日』にも共通する「即物的なタッチにより却って鮮明化される戦争の悲惨さ」というのは「客観性」という特性を本質的に内包する映画だからこそ為し得る効果ですし、尚且つその冷徹な視点がそのままメッセージ性にまで昇華されるというこの重層的な作りにはまたしても唸らされました。2作続けて観たことで喜八作品にも俄然興味が湧いてきましたし、本作も今すぐ帰って…!というテンションではございませんがまた必ず観直そうと思います。 庵野監督の生涯ベスト作品としても有名でご本人曰く「100回以上観ている」とのこと。それにしても、100回以上繰り返し観るくらい大好きな映画に出会える機会って今後何回あるんでしょうかね。でも『スパイダーマン2』の列車アクションと『死亡遊戯』のダン・イノサント戦に限って言えば僕も150回くらいは観てると思う。
いいね 3コメント 0


    • 出典
    • サービス利用規約
    • プライバシーポリシー
    • 会社案内
    • © 2024 by WATCHA, Inc. All rights reserved.