レビュー
dreamer

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4 years ago

3.5


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ソラリス

映画 ・ 2002

平均 2.8

"スティーヴン・ソダーバーグ監督が挑んだ、スタニスワフ・レムの原作小説「ソラリスの陽のもとに」の映画化作品 「ソラリス」" 惑星ソラリス。謎めいたこの星を探査中の宇宙ステーションで不可思議な事件が続発し、遂に地球との交信も途絶えてしまいます。 この謎を解明すべく派遣された心理学者クリス・ケルヴィン(ジョージ・クルーニー)が到着した時には、既に友人の姿はなく、残された二人の様子も何かおかしい----。 一体、ここで何が起こっているのか? 実は、ソラリスというのは、人の心の奥底に秘められた人物を実体化させる力を持った惑星だったのです。 こうして、クリスの目の前にも、かつて自殺した妻のレイア(ナターシャ・マケルホーン)が現われ、次第にクリスの精神の平衡が失われていきます。 ポーランドのSF作家スタニスワフ・レムの小説「ソラリスの陽のもとに」を原作にした、アンドレイ・タルコフスキー監督の「惑星ソラリス」に続く二度目の映画化作品ですが、タルコフスキーの「惑星ソラリス」が、未だにフリークの多い玄人好みの作品なだけに、スティーヴン・ソダーバーグ監督にとっては、かなりのプレッシャーを強いられるチャレンジだったと思います。 それでも、複雑怪奇なストーリーをことさらテンポ良く、シンプルに語ろうとする映画話術、そして表立った主張を抑制し、あくまで背景の舞台装置として納まっている未来世界のシャープな映像、時には脳波を癒し、時には刺激する音の使い方など、どこを取っても、ソダーバーグ監督の鋭いセンスが光っている作品だと思います。 タルコフスキー監督の「惑星ソラリス」との大きな違いは、タルコスキー版にあった"哲学的な深みや科学と人間の理性の相克"といった主題が影を潜め、夢想的で通俗的な面が色濃く出た作品になっている事だろうと思います。 そして、このソダーバーグ版は、一種のラブ・ロマンスになっているような気もします。 その証拠に、クリスと妻との過去の経緯の紹介にかなりの時間が割かれているし、最終的には、恋愛において過去の喪失や悔恨が贖罪された後に、同じシチュエーションに置かれた人間が、同じ過ちを繰り返さないか、という極めてシュールな主題が突き付けられているのです。 以前に二人が過ごした時間が今、目の前で全く同じように繰り返されていく様を描いていくプロセスは、なかなかスリリングであり、宿命の厳しさをまざまざと見せ付けられる思いがしました。 ともあれ、タルコフスキー監督の「惑星ソラリス」を愛するファンの間では、こういった違いを良しとしないとする人たちが結構たくさんいると思いますが、しかし、ソダーバーグ監督が原作から取り出してきたのは、全く別のテーマであったというだけで、彼が描きたかった事については、ある程度、しっかりと描き込めていたのではないかと思います。 とにかく、あれもこれも描こうと欲張って、だらだらと長い作品になるよりは、よっぽどいいし、映画作家としてのポリシーが伝わってくる分、私は好きですね。 何より、多面的で豊かな問いかけを含む原作の小説の奥深さが、あらためて実証される結果になった事は、非常に良かったと思います。