レビュー
愚かで、とても愚かで、どこまでも愚かな主人公・幸夫に、冒頭から苛々しっ放し。で、なんでこんなに苛立つかというと、同族嫌悪かもと思い立ち、そこから居心地が悪いったら。妻を失った後、何かの帳尻を合わせようとするみたいに色々あがき続ける幸夫のイタイタしさ(あえてカタカナ表記)を見てらんないんだけど、弛緩しない程度に意外性のある展開や、演出がすごく画面の緊張感を保ってて、見せ方の小技も随所に光り(坂道とかね)、目を離せないです。そんな彼の孤独と空虚さが浮かび上がる、中盤以降の幾つかの転機に心がざわめき始めます。例えばバスの事故なんかでいきなり死なない限り、人生は続き、自分の愚かさと折り合いをつけ、受け入れるしかない。あーもー、嫌だなー自分と向き合わされてるみたいで。 本木雅弘や竹中ピストルは好演ですが、単純に扱われる脇役があまりおらず、その役者陣の手堅さが光ります。深津絵里周りの描き方にもゾクゾク。 ウディ・アレンの痛々しいコメディをさらにソフトコンセプトにしたような今作は、観てハッピーになれるものではないけれど、観たもの自身を映すいい鏡です。共感できない人が多ければ、この世界は素敵でしょうし、共感できる人が多ければ、この世界は寂しくないと思いました。
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