
矢萩久登

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平均 2.9
2026年02月20日に見ました。
30年経っても色褪せない「衝撃」。日本映画の夜明けを告げた45分間のアートワーク 岩井俊二映画監督30周年記念上映『IWAI SHUNJI Film Works 30th Anniversary 1995-2025』にて、1994年の名作『undo』を30年ぶりに鑑賞しました。 上映時間はわずか45分。しかし、その短尺に凝縮された熱量は、公開当時の衝撃を鮮烈に思い出させてくれます。 ■ 停滞する日本映画界に投じられた「一石」 1990年代初頭。当時の日本映画界は「アルゴ・プロジェクト」のような新しい動きはあったものの、依然として魅力的な洋画に押され、話題と言えば大物女優やアイドルの露出ばかり……という低迷期でした。 そんな中、彗星のごとく現れた本作は、キャリア絶頂期の山口智子氏と新進気鋭の豊川悦司氏という豪華な共演以上に、その「映像言語」の革新性に圧倒されました。 ■ 岩井・篠田・隅田が織り成す「動く絵画」 岩井俊二監督、撮影監督の篠田昇氏、照明監督の隅田浩行氏。この黄金トリオが紡ぎ出す一コマ一コマは、まるで計算し尽くされた絵画のようです。 改めて見直して驚愕したのは、セットや小道具に至るまでの徹底した美意識。特に、部屋の「壁」の色彩センスはずば抜けています。昨今の作品に多い「のっぺりとした白壁」とは一線を画す、陰影に富んだトーンと柔らかなソフトフォーカスの使い方は、まさに職人芸であり、純粋なアート作品だと感じます。 同時期のウォン・カーウァイ監督とクリストファー・ドイル氏のコンビにも通じる、あの時代の熱気が宿っていました。 ■ 確信が、証明された日 今ではなかなか見ることのできない、山口氏と豊川氏による大胆かつ繊細なアンサンブルも本作の大きな魅力です。 公開当時、「この映画は何十年経っても古びない」と確信していましたが、今回の再鑑賞でそれは見事に証明されました。日本映画の明るい未来を夢見せてくれたあの頃の感覚が、今もなお胸を打ちます。