レビュー
星ゆたか

星ゆたか

3 years ago

3.0


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子猫をお願い

映画 ・ 2001

平均 3.5

2023.4.8 WOWOWの〈ミニシアターに愛をこめて〉の枠内の視聴。 斎藤工(たくみ)さんとゲスト柄本時生(ときお)さんの解説付き。 2001年韓国で初めは興行成績も振るわなかったが。 後に評判と高い評価で、その年の女性が選ぶNo.1の映画に選出されたとか。 日本では2004年にユーロスペースというミニシアターで公開されたらしい。 チョン・ジェウン(69年生まれ)監督・脚本の長編デビュー作品。 出演のペド・ウナ(79年生まれ)さんが本作で、韓国の映画大賞の女優賞受賞。 彼女はその前年「ほえる犬は噛まない」(00:ポン・ジュノ監督)で映画デビュー。 その監督の傑作「グエムル―漢江の怪物」(06)にも出演。 さらに日本の山下敦弘監督の「リンダリンダリンダ」(05) 是枝裕和監督「空気人形」(09)などにも出演した人気の女優さんだ。 物語は同じ高校を卒業した五人の仲良しグループのそれぞれが、対面する大人の社会の中で変わってゆく様子を、丹念にデリケートに描いたものだ。 父親の経営するサウナの雑用係を無料でしているテヒ(ペ・ドウナ)。 心優しい彼女はボランティアで、足の不自由な障害者詩人の口述筆記。 パソコンより文字の打ち込み音がいいと詩人の要望で、タイプライターでうって上げていた。またジョンにお金👛を貸したり、最後まで変わらぬ友情を捧げる。 誰にも変わらぬ心配りの出来る彼女のとりあえずの夢は、オーストラリアにワーキングホリデーに行くことだ。 五人の中では一番美人のヘジュ(イ・ヨウオン)は証券会社に就職して給料も安定しているので。 関心はファッションと美容。 メガネからコンタクト、そして更にレーザー手術まで受けた。 美人の姉の住んでいたソウルのマンションに移り住む。 やや何でも合理的に考え安く、暗い表情のジョンに冷たくあたったり、彼女にぞっこんで優しい男👨友達チャニオンを、便利に“アッシー代わり”に使ったりしている。 両親を亡くし祖父母とオンボロアパート(大家に家の修繕を何度頼んでも、嫌なら引っ越せの一点張り)に住むジャン(オク・チョン)。 テキスタイルデサインの勉強をしたいと望み、暇があれば書いているが、中々身元保証人がいないので、商業学校を出ても就職出来ないでいる。 あと双子のピリュ、オンジュの二人はオシャレ小物の露店商みたいな仕事で生計を立てている。 斎藤さんと柄本さんは、この双子に注目している発言だが。 描写も他の三人に比べずっと少ないし、見た目以上の印象はない。 この五人を演じた女優さんはいずれも1980年前後の生まれの人達で実年齢の役どころだ。 あんなに他愛もないことでふざけあっていた彼女ら。 まだ大恋愛や結婚の状況前なので、その頃普及し初めたケイタイで、まだ呼び合えば。 変化に気づきながらも、あの頃の雰囲気楽しさも、合理的なヘジュと気分の落ち込みがちなジョンを除けば、何とか戻れた。 卒業後一年ぐらいじゃ、そんなもんだろ。 むしろ周りの大人らとの関わりで、変化させられる中、意地でも“変えたくない” (これまでの自分を守る)人間関係なのではないか。 そんな彼女らの仲の良さの絆の“しるし”の如く、存在するのが〈猫を愛でる気持ち〉だ。 それは生物を、強いては人間を慈しむ気持ちへと通じる。 この監督さん、猫への思いに特別な所があるらしく。 2022年12月「猫たちのアパートメント」というドキュメンタリー映画を日本でも公開している。 この映画ではもともとジョンが拾ってきた迷い猫😺だ。 飼い主を巡り、ジョンからヘジュへ。そして一旦ジョンに戻り、さらにテヒから最後はピリュ・オンジュ双子の手に。 『子猫をお願い‼️』と。 最初に優しい祖母👵に言われる言葉。 『猫は神秘的な動物で家で飼うのは良くない。不吉なことが起こると。』 案の定このあと。 ジョンが仲間と楽しく過ごし留守の間、家が崩壊し祖父母が下敷きの犠牲で亡くなる事故に遭遇する。 この映画は日本を越える徹底的な学歴社会の韓国ならではの内容とも言われたが。 大学へ進学しなかった女性達の待遇する、この社会での“生きずらさ”を描いている。 一見華やかな証券会社に勤めたヘジュも、自前の世渡り術でいい人生のスタートの方だと思いしや。 実態はお茶くみとコピー資料などの雑用係で一日が過ぎる。 上司の女性にも夜学して学位でも取らないと。それは変わらないとも言われる。 彼女らが夜間住む街の散策で見る光景。 遅くまで懸命に食品工場で働く一般の女性達の姿だ。 この辺は今日の日本でも、経済の底辺を非正規職員の労働力に頼っている実情と照らし合わせても、そうは変わらない感じもする。 彼女らがこのあと。 20代から30代に向けて、どういう心ざしをもって生きていったのか。 そして社会はそういった若者をどう迎えていたのか。 興味が持たれる映画だ。