
ジュネ

1917 命をかけた伝令
平均 3.8
2020年35本目は、アカデミー賞でも3部門を受賞したサム・メンデス監督最新作、『1917』。 ------------------------------------------------------------ 『フォードvsフェラーリ』を見たとき、これ以上の臨場感を感じられる作品が今年出てくるのだろうか?と思いました。現在公開中のドキュメンタリー『彼らは生きていた』を見たとき、これ以上に戦場を疑似体験させる作品があるのだろうか?と思いました。『1917』はその答えであり、全く新しい映像体験をさせてくれる一作です。映画史上の転換をもたらすかもしれない作品に出会えるとは…2020年恐るべし。 ------------------------------------------------------------ サム・メンデスと撮影監督ロジャー・ディーキンスの作り出す世界に最初から最後まで釘付けで、全編ワンカットのもたらす興奮に目が離せません。実際はデジタル処理で間を繋いでいるようですが、その継ぎ目がまるで分からないのも凄すぎますし、これだけ広大なセットを組んで撮影できる環境に脱帽するばかりです。 ------------------------------------------------------------ 撮影がスタートした瞬間から登場人物は前へ前へと進むのみで、ワンカットの性質上、後戻りはできません。後ろから追いかけるのみでは単調な絵面になりがちですが、本作では360度あらゆる角度から走り続ける彼らを追いかけており、緊迫感が更に高められています。普通はこんなことを続けていたらカメラが少しは揺れたりするものですけど、凪いだ海のようにシームレスな動きなのが信じられないですね。 ------------------------------------------------------------ 主人公のスコフィールドは相当に若く、こんな過酷な任務は「死にに行け」と言われたも同然です。しかし、全身ズタボロになろうと彼は走ることを止めません。観客である私たちは伝令によって戦争が終結せず、再び多くの血が流れたことを既に知っています。だから「もう走らなくていい」と止めたくなる瞬間が何度も訪れる。それでも彼が走り続けるのは、「親友との誓い」の為であり、「祖国への忠誠」の為です。当時は自国に忠誠を誓い、出兵することが英雄的行為として正当化されていました。 ------------------------------------------------------------ 国の威信とか大義とか、そんな曖昧なもののために大勢の命が失われる状況が100年経った今でも続いているのかと思うと、やっぱり異常と言わざるを得ません。兵士はただの人間です。でも「国」が普通の人間を人殺しに変えてしまう。本作はまるでFPSゲームを再現したかのようで、戦争を娯楽化するなとの批判もあるかもしれません。でも、見終わった後に「楽しい」なんて気持ちは微塵も浮かびませんでした。劇中で起こっている惨状は、この先も一生無くならないでしょう。それがひたすらに悲しく、虚しかったです。