レビュー
メキシコ麻薬戦争の一端を描くサスペンスです。っていうか、もう本当に戦争。開巻早々、ただならぬ緊張感が続き、主人公のFBIの女性捜査官が経験する不条理な地獄巡りに観客は否応なく引きずり込まれます。不条理を形作る事実が明らかになると、更に奥に潜む不条理の闇。 諦観の中に狂気が見え隠れするベニチオ・デル・トロ。事実を知るうちに無力感に打ちひしがれるエミリー・ブラント。二人の熱演。 その地域の日常の熾烈さもさることながら、何気ない街のスケッチすら、乾いたタッチで"決定的に色々と終わってる感じ"を抱かせます。撮影のロジャー・ディーキンスの素晴らしい仕事です。 邦題の"ボーダーライン"とは、国境であり、立場であり、善悪であり、法や倫理の問題です。終盤の、日没直後のマジックアワー、光と影が曖昧になる中、作戦が始まるのは象徴的で、その末に判明するのは、いくつものボーダーラインの消失。最後に主人公すら、あるボーダーライン上で葛藤します。 デル・トロが落とし前をつける場面に主人公が不在なのは成り行き上やむを得ないけれど、ちょっと物足りない気も。いや、あれでもいいのかな。 爽快な映画じゃないけれど、今日も世界のどこかのこうした街で、同様のことが起こってる。一見の価値ありです。
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