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ROMA/ローマ
平均 3.6
ここ10年間で1番の傑作とも言える作品。ネットフリックスに契約している人は是非観て欲しい。 この作品は、監督アルフォンソキュアロンを育てた乳母リボとの思い出を元に作られた監督の自伝的な作品。70年代初頭のメキシコシティ、学生運動による混乱の中で生きていた人々を、中流階級の家庭で働く家政婦クレオの視点から描いている。歴史映画にも近い。 ヒロインのクレオ役をはじめとした殆どの出演者が素人。全体のシナリオを知っていたのは監督だけで、役者たちにはその場で流れを説明して、あとはアドリブで撮っている。クレオ演じるヤリッツァアパラシオは学校の教師で、彼女の子供に対する愛を感じ取り、この役に起用したそうだ。 「トゥモローワールド」、「ゼロ・グラビティ」で手を組んだルベツキが参加できなかったため、監督自身が撮影を務めた。「過去を現代の視点から観察する」というコンセプトで撮っており、過去を描くため白黒であるものの、映像はとても綺麗で洗練されている。 この映画で、私が一番印象的に思ったのが“音”である。全編BGMはなく、全て環境音で構成されている。クレイが水を撒く音、犬の鳴き声、ラジオから流れる音楽、喧騒とした街中での人々の話し声、田舎の村で駆け回る羊たち。監督は、この映画は普遍的で誰にでもわかるような作品であって欲しいと言っている。この作品を通して、観る者の過去や記憶に繋がってほしい、あなたにとっての“ローマ”を私や世界と共有して欲しいと。この何気ない音たちが、この映画が我々を過去と結びつける助けになっていると思う。 ただノスタルジーに浸るだけではなく、自分がどのような人生を送ってきたのか考えながら観るととても良いんじゃないかなと思う。 当時のメキシコでの人種や社会階級による格差というのも、この映画の重要な要素の一つ。現代に通ずる問題を描いた社会的な作品でもあるのだ。 すでにヴェネツィア国際映画祭で金獅子賞を受賞しており、ゴールデングローブ賞では3部門にノミネートされている。スピルバーグはネット配信の映画が賞を取るべきではないと言っているが、我々に素晴らしい体験を提供してくれたこの作品には、是非何かしらの賞を取ってほしい。