レビュー
てっぺい

てっぺい

9 months ago

4.0


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国宝

映画 ・ 2025

平均 4.1

2025年06月08日に見ました。

【国宝映画】 歌舞伎の美しさ、定めに翻弄される姿を演じる役者の演技力が国宝級。歌舞伎を美しく撮り、女形の世界を深掘りして見事に仕上げた製作陣の力も国宝級。仕上がった3時間のボリュームも当然見応え満点の国宝級。 ◆トリビア 〇喜久雄を演じた吉沢亮は、約1年半を掛けて、歌舞伎の女形を吹替えなしで演じるという挑戦を成し遂げた。「歌舞伎はいわゆる“型”の世界。瞬間を切り取ったとき、しっかり絵になるように見え方にこだわった究極体。手の位置や体の角度、視線の配り方など、ミリ単位で見え方を突き詰めていく表現には衝撃を受けました。」(https://www.cinematoday.jp/news/N0148889) 〇吉沢曰く、踊りのシーンの撮影はそれぞれ1~2日間、朝から晩までずっと同じ演目をやりつづけたという。クライマックスの「鷺娘」後半部分は、体力の限界を考え2、3テイク限定で撮影するほど、過酷で緊張感のある撮影だったという。(https://www.gqjapan.jp/article/20250603-yoshizawa-ryo-kokuhou-interview) ○ 吉沢は本作で「鷺娘」を踊っているときに特別な高揚感と幸福感を味わったという。「自分の呼吸と鼓動しか聞こえない。極限まで入り切った世界。ある種の覚悟だったり、いろいろな挫折だったりを経験して、ようやくたどり着いた感覚だなと思えたんです」(https://www.cinematoday.jp/news/N0148889) 〇吉沢は喜久雄を演じることについて、俯瞰で自分を見る事よりも、役に集中する事を求められていたと話す。「自分自身をひたすらに追い込む以外に、役に入る方法がなかった。たぶん初めての経験だったと思います。役を生きることが今まででいちばん苦しかったし、それを乗り越えた先にしかない表現がきっとスクリーンに映っているんじゃないかって。役者はきつい仕事だなとあらためて思いました。」(https://www.gqjapan.jp/article/20250603-yoshizawa-ryo-kokuhou-interview) 〇吉沢は、喜久雄の中にあるのは、ただただ純粋な歌舞伎への愛情だと語る。「彼が歌舞伎と真摯に向き合えば向き合うほど、周囲を不幸せにしてしまうし、阻害されたりもする。そういった複雑な人間関係をもってしても、歌舞伎以外のことには目が入らない。その部分は大事にしました」(https://eiga.com/news/20250602/16/) 〇ビルの屋上で狂ったように踊るシーンはほぼアドリブだったという吉沢。森七菜から『どこ見ているの?』と聞かれ『どこ見てたんやろな』は自然と出てきたセリフだったそう。「僕自身のフィルターを通しながら、確かに喜久雄ってどこ見ているんだろう?と分からなくなる瞬間で、すごく素直にあの言葉が出てきたこともあり、あのシーンの撮影風景も含めて何もかもが印象に残っています」(https://eiga.com/news/20250602/16/) 〇吉沢について李監督は次のように語る。「喜久雄を演じられるのは彼しかいないと思った。外見の美しさはもちろん、俳優以外の人格が考えられないところに魅力を感じた。何を思考しているのか、何を求めているのか、見えづらい。フィルターが何枚も重なっている。」(https://hochi.news/articles/20250602-OHT1T51005.html) 〇横浜流星は俊介の役作りについて、自分とは正反対の人間であり、横浜流星に戻ったときに違和感を覚えることを逆に大切にしたという。「考え方がそもそも違うので、自分に戻ったときに違和感を覚えたときこそが、ちゃんと俊介として生きられているのかなと考え、その違和感を常に大切にしていました。」(https://eiga.com/news/20250602/16/) 〇花井半二郎を演じた渡辺謙について監督は「何を欲しているのか理解してくれて、頼りになる存在」と信頼を寄せる。自分の演技をしながら、少年時代の喜久雄を演じた黒川想矢を理想的なカメラアングルに誘導するなど、「現場で何が最善なのか、常に考えて動いてくれた」と称賛する。(https://hochi.news/articles/20250602-OHT1T51005.html) 〇半二郎が『おまえは芸で勝負するんや』と話すシーンで、渡辺謙の人間性を感じた吉沢は泣きそうになったが監督に制されたという。「お芝居が素晴らしいのはもちろんなのですが、そこに謙さんのお芝居に対するこれまでの向き合い方がしっかり乗っかっている感じがとても魅力的でした」(https://eiga.com/news/20250602/16/) 〇本作の歌舞伎指導を務めたのは中村鴈治郎。人間国宝・四代目坂田藤十郎を父に持ち、2019年には紫綬褒章を授与された人物で、彰子の父親で歌舞伎役者・吾妻千五郎役として本作に自らも出演している。(https://kokuhou-movie.com/news.html) 〇まるで舞台上にいるような臨場感のあるカメラアングルにもこだわったという監督。「役者の息づかいにどれだけ近づけるかが一番のテーマだった。役者の汗、化粧の落ち具合、毛穴まで見えるんじゃないかというくらい、肉薄しました。歌舞伎を見せているようで、化粧の奥にある役者の必死さを見せたかった。」(https://hochi.news/articles/20250602-OHT1T51005.html) 〇吉沢は監督自身が役に入り込むこともあったと話す。「僕らが追い込まれるシーンのときに、監督の呻き声が聞こえてくるんです。きっと僕らと一緒に役に入り込みながら見ているんだろうなと伝わる瞬間でした」(https://eiga.com/news/20250602/16/) ◆概要 2025年・第78回カンヌ国際映画祭の監督週間部門出品作品。 【原作】 吉田修一「国宝」(吉田修一作家生活20周年記念作品) 【脚本】 「サマー・ウォーズ」奥寺佐渡子 【監督】 「悪人」李相日(「悪人」「怒り」に続いて吉田修一の小説を映画化) 【出演】 吉沢亮、横浜流星、渡辺謙、寺島しのぶ、高畑充希、森七菜、三浦貴大、見上愛、黒川想矢、越山敬達、永瀬正敏、嶋田久作、宮澤エマ、中村鴈治郎、田中泯 【主題歌】 原摩利彦 feat. 井口理「Luminance」 【公開】2025年6月6日 【上映時間】175分 ◆ストーリー 任侠の一門に生まれた喜久雄は15歳の時に抗争で父を亡くし、天涯孤独となってしまう。喜久雄の天性の才能を見抜いた上方歌舞伎の名門の当主・花井半二郎は彼を引き取り、喜久雄は思いがけず歌舞伎の世界へ飛び込むことに。喜久雄は半二郎の跡取り息子・俊介と兄弟のように育てられ、親友として、ライバルとして互いに高めあい、芸に青春を捧げていく。そんなある日、事故で入院した半二郎が自身の代役に俊介ではなく喜久雄を指名したことから、2人の運命は大きく揺るがされる。 ◆ ◆以下ネタバレ ◆ ◆女形 「女形とは」の説明が入り、喜久男の背に白粉が塗られる冒頭。半二郎がその舞いに魅了され、目の前で父を亡くした喜久男がその背に刻む刺青からタイトルへ。女形の才を持つ喜久男の、国宝にいかにして成り上がるかが本作で描かれることがここで記されていた。喜久男はその才を見出され半次郎の名を襲名するに至るも、素人に“偽物が!”と罵られるほどに酷く落ちぶれたのち、国宝の手招きで復活を遂げる。まさに“奈落の底”から上がって俊介と同じ高さに立った2度目の「二人道成寺」のシーンも印象的。波瀾万丈ながらも、求めるものを掴み取っていくその生き様の力強さがスクリーンにみなぎっていた。 ◆国宝 ミリ単位で見え方を追求する歌舞伎の世界に衝撃を受けたという吉沢亮。しかしその立ち振る舞いは見事で、俊介と舞った「二人道成寺」の一瞬の表情で背筋が凍り、ラストの「鷺娘」の少し狂気じみた舞も衝撃。ほぼアドリブだったという、屋上で彰子に去られた後の“悪魔と契約した”その乱れた舞にも惹きつけられる。他の役者も当然素晴らしかったが、吉沢亮の本作での輝きっぷりはもはや国宝ものだった。かたや演出面では、国宝である万菊が本作で2度、あの美しい手招きで喜久男を呼ぶシーンが印象的。1度目は少年期の喜久男に万菊が初対面した際、2度目は床に臥した万菊がついに喜久男の才を認めた時。国宝に認められてこそ、喜久男が国宝にならしめたる本作の重要なシーンを、女形らしいしなやかな手招きで表現していた。肉薄するカメラアングルにこだわったという監督の言葉の通り、舞のシーンはどれも表情のアップが効果的で、特に「鷺娘」での荒々しさがよく撮れていた。その意味でも、本作は国宝級の演出がなされていたと言っても過言じゃない。 ◆ラスト 喜久男が人間国宝の座を与えられ、「鷺娘」を舞うラスト。喜久男はここでとある景色を探していると明かす。思えば本作のファーストカットとなっていたあの花吹雪は、喜久男が花井家を追われた際には消えてしまい、鷺娘の最後に喜久男の前に現れた。喜久男が文字通り“悪魔と契約した”かと思えるほど、幾人もの犠牲を伴い、傷つき傷つけられながら求めたもの、それがあの景色。春江に彰子に芸妓と娘、半二郎に俊介と、喜久男にとっての犠牲を伴ったからこそたどり着いた国宝という景色なのか、芸に邁進し続けた男の末路としての景色なのかは見るものに委ねられる作りになっていた。いずれにしても、喜久男が全てを投げうって辿り着いた先のあの景色は、喜久男にとって何より美しいもの。3時間ずっしり描かれた男の生き様に対して、あれ以上もあれ以下もない、最も相応しいラストカットだった。 ◆関連作品 ○「悪人」('10) 李監督による吉田修一作品映画化1作目。悪人とは。プライムビデオ配信中。 ○「怒り」('16) 同2作目。3つのストーリーが同時展開していく。プライムビデオ配信中。 ◆評価(2025年6月6日現在) Filmarks:★×4.3 Yahoo!検索:★×4.2 映画.com:★×4.6 引用元 https://eiga.com/movie/101370/ https://ja.m.wikipedia.org/wiki/国宝_(小説)