レビュー
戦場での不条理な突撃命令により顔の下半分を失ったエドゥアールは一命をとりとめたものの、その容姿は余りにも変わり果ててしまっていた。また、痛みを抑えるためにモルヒネを投与していた彼の意識は、いつも朦朧としていた。もはや彼は生きる屍なのだ。そんな彼のそばにはいつも身の回りの世話をしてくれるルイーズと言う名の、ちょっと風変わりな女の子がいた。 ある日のこと、人前に出る時はいつも奇妙なマスクで顔を覆っているエドゥアールが、彼女の目の前でマスクを外し、醜い素顔を晒すことに。だが、ルイーズの反応は意外なものであった。その小さな手で慈しむようにエドゥアールの顔に触れる彼女の姿を見て、私の涙腺は脆くも崩れ去ってしまった。ルイーズの心の中では、恐れよりも憐れみの気持ちのほうが勝っていたのだろう。 いや、それよりも彼女はこれまでに弱者のことなど気にもかけない、私利私欲にまみれた大人たちをたくさん見て来たのだろう。強者が弱者を力でねじ伏せる世の中だ。その醜い心根と比べれば、エドゥアールの醜い顔なんて、取るに足らないものだと感じたのではないだろうか。 ルイーズの華奢な体を抱き締め、声にならない声で泣きじゃくるエドゥアール。 本作は今年見た映画の中で間違いなくベスト1ですね。
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