レビュー
2020年105本目は、世界中で波紋を広げているカトリック教会の虐待事件に迫った『グレース・オブ・ゴッド』。 ------------------------------------------------------------ フランソワ・オゾン監督の新作ながら、いつもの現実と虚実の合間を行き来するような当惑感は存在せず、むしろ事件をできる限りリアルに再現しようとする確かな「実在感」を感じます。『スポットライト』のボストン・グローブ紙が真実を暴き出してから早20年近くが経とうとしていますが、その余波は全世界へと広まり、留まるところを知りません。 ------------------------------------------------------------ フランスでプレナ神父が5年の懲役刑を受けたのは今年3月の話ですし、オーストラリアでは地方裁判所が有罪とした神父に対する判決を最高裁が逆転無罪にして大炎上。アメリカでは性的虐待に対する賠償金の負債を抱え込み、数々の司教区が破産しています。一連の事件は、虐待を受けた被害者たちにとっても、その罪を償わなくてはならない教会側にとっても、まだ始まりに過ぎないことを痛感します。 ------------------------------------------------------------ 本作では3人の視点から物語が紡がれていき、今も教会に通い続け信仰を捨てないアレクサンドル、無神論者となるフランソワ、破滅的な暮らしを続けるエマニュエルの立場・考え方の違いが浮き彫りになっていきます。「被害者」の一言でひと括りにできない複雑さに苦しくなりつつも、彼らが一堂に会するシーンでは「仲間」を見つけられたことに安堵しました。 ------------------------------------------------------------ 人々の記憶が風化しないよう、映画という媒体を通じ、今後も知らしめていく価値のある題材だと思います。
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