レビュー
dreamer

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4 years ago

5.0


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飢餓海峡

映画 ・ 1964

平均 3.6

この映画「飢餓海峡」は、映像実験もあり、力量観あふれる運命劇で、壮大なスケールの人間ドラマの秀作だ。 水上勉の同名小説を、鈴木尚之がシナリオ化し、内田吐夢監督が映画化したものだが、内田吐夢監督は、その持てる力をフルに発揮し、16ミリフィルムを拡大して、実感を強調するなどの映像的な実験も試みて、力量観あふれる運命劇を作り上げている。 物語は、1946年、台風が青函海峡を通過中、一瞬の晴れ間を台風の通過と間違えたため、青函連絡船が転覆し、500人余りの人が死亡した"洞爺丸事件"から幕を開ける。 台風が吹き荒れる中、函館に近い岩内町では大火が発生し、質屋一家が殺害される。 犯人は、洞爺丸事件のごたごたに紛れて、内地へと逃亡したのではとみられた。 執拗に犯人を追う刑事を通して、物語は推理ドラマ風に展開していく。 そして、事件発生から犯人逮捕までには7年の歳月が流れる。 その間に、人間の在り様は大きく変わっていく。 その変わり様と変わらぬ人間の心を、内田吐夢監督はじっくりと凝視していく。 犯人と思しき男は、京都の舞鶴で事業家として成功している。 だが、名前は違っているし、犯行を実証するものもない。 どうやって、犯人を暴いていくのか-------。 そこがクライマックスとなる。 事件は、犯人が下北半島に上陸して一夜を共にした女の出現で、解決へと向かう。 女はその時、犯人から大金をもらったことに恩義を感じ、その時の礼を言おうとして、犯人に近づき殺される。 女の一途な純な心は、自らを守ろうとする男のエゴで消されていく。 のっぴきならないところに追い詰められていく男と女の関係を、内田吐夢監督はダイナミックに描いていく。 犯人は逮捕される。悪は憎むが、悪人の中にも人間の善なる心の一片を知りたいと、事件を追い続けてきた刑事に、犯人はその心情を吐露する。 犯人を演ずる三國連太郎の凄まじいまでの迫力を持った告白の熱演が展開される。 まさに日本映画史に残る、圧倒的な熱演に唸らされる。 執念の刑事を演ずる伴淳三郎もいぶし銀のような演技で、一世一代の好演だと思う。 そして、恩を忘れなかった哀しき娼婦役の左幸子も、したたかな演技を繰り広げており、芸達者たちの演技合戦も実に見ものだ。 また、伴淳三郎とコンビを組む、若き刑事に高倉健が扮しているが、東映で任侠の男を演じていた頃、健さんは自分の代表作はと問われ、この作品を挙げていたそうだ。 重量感たっぷり、見応えもたっぷりの、日本映画史に残る秀作だと思う。