
てんぞー

海底軍艦
平均 3.3
海底帝国ムウを海底軍艦〝轟天号〟が蹂躙する話。 のちのちゴジラ怪獣としてオールスター怪獣映画に出演する竜のような怪獣〝マンダ〟のデビュー作だが、マンダ自体の活躍は控えめ。というか、轟天号が驚異の超兵器すぎてマンダを一蹴してしまうので少しかわいそうに思える。 物語はムウ帝国と日本政府、轟天建武隊との三つ巴で進んでいく。 かつての栄光を取り戻すため世界侵攻を進めるムウ帝国と、その陰謀を防ぐため活躍する日本政府の面々、そして超兵器を握る轟天建武隊。三者の信念と野望がぶつかり合う物語はなかなか見ごたえがある。 第二次大戦中に離反する形で姿を消したまま轟天号建造を行っていた轟天建武隊の宮司大佐と旧帝国海軍の元少将である楠見との意見のぶつかり合いは、戦後20年が経った当時の時代背景を考えると非常に緊張感がある。 あくまで日本帝国の捲土重来を期して轟天号を開発したとする宮司大佐。既に戦争は終結し、あくまで国連の一員である日本国として、世界の脅威であるムウ帝国に対して轟天号を襲撃させてほしいと要請する楠見。終戦を受け入れられない宮司大佐ではあるが、その国防にかける信念は本物だと分かるので、このやり取りはとても訴えかけるものがある。 特に、「なぜ反乱にも等しい轟天号建造を黙認したのか」「20年という時間が考える時を与えてくれた」という両者の受け答えは時代に置かれていく者と先に進む者との違いを表していて、とても心に残る。 その後は、この戦争キチガイめ!など流石に当時でもライン越えでは?という暴言を吐かれたり娘が誘拐されたり轟天号のドックが爆破されたりなどして、決意を新たにした宮司大佐が轟天号で出撃していく流れに。 本作の主役は何と言っても海底軍艦こと轟天号。 米軍の潜水艦が圧壊する深度を遥かに超えて潜航できる潜水能力、冷凍光線をはじめとする各種兵装、艦首の大型ドリル!特に何の説明もなく飛行までこなす化け物っぷりで、設定ではジェットエンジン搭載で飛行可能という事だが水中から直接、垂直離水できるのは一体どういう仕組みなのか。さらに対マンダを想定したとしか考えられない電撃機能など、あらゆる特撮ファンを魅了してやまない超兵器。 対するムウ帝国は人工地震や飛行兵器などで一方的に地上攻撃も可能な科学力を持ち、ペットにマンダを飼っているなど、強大な国力を持っている。その科学的な兵器の数々とは裏腹に帝国文化自体はあまり進展しておらず、古代ギリシャのような装束を着て石箱を使い、事あるごとに祭事のような集会を開いている。特に警備兵の装備はお粗末で、たいてい半裸で槍しか持たずに警備をしている。 おそらく海底まで侵攻してくる敵勢力を想定していないのだと思う。圧倒的な科学力がありながら、たった一隻の海底軍艦をやたらと恐れていたのもそこが理由だろう。実際、轟天号が出撃するとあっという間に帝国本土への侵入を許し、あっという間に壊滅させられている。 沈みゆくムウ帝国に一人帰るムウ皇帝の哀れな姿には、この作品のメッセージが込められているような気がする。 東宝特撮の傑作の一つである。