レビュー
完全に子供が主体の映画で、大人は脇を固めているだけであり、そして、これまた完全に芦田愛菜ちゃんが堂々の主演女優である。末恐ろしいというより、本物の天才を、今、まさに、そこに見ているようで、圧倒されたという感じがする。 また、行定監督の作品群の中では、一つ異彩を放っているということが言えるのではないかと思う。 というのは、この監督の場合、非常に練られた脚本で、そしてまた非常に巧い語り口による充実した映画を観たという感想をいつも持つのだが、いま一つ泣けないというか、揺さぶりが無い作品が多かった気がする。何と言うか、監督の手の中で、良いように「見せられた」という感じがして、どうも居心地がすぐれない気がしていたのだ。 本作のラスト少し前の、「ほっさん」による、「一人にしてしまって、ごめんな」の泣き演技に、不覚にも涙が出たのは、私だけではないと思う。友達を思うが故の、純な情けない気持ちが、これほどストレートに出たシーンは滅多にお目にかかれないと思った。この監督の過去作に、これほど揺さぶられるシーンは無かったと思う。 さらに、「在日」、「吃音」、「児童の鬱」という、かなり際どいところを、さりげなくまとめ上げているのも、爽やかな気がした。 全体としては、子役によるコメディなのだろうが、鑑賞後感は非常に温かく、ターゲットとする観客は、むしろかなり大人の層であろうと思う。
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