レビュー
dreamer

dreamer

4 years ago

3.5


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狙撃

映画 ・ 1968

平均 2.2

この東宝映画「狙撃」は、1960年代末から1970年代初めにかけて作られた、いわゆる"東宝ニューアクション"の嚆矢となった、ハードボイルド・アクション映画の佳作だ。 この映画の冒頭で、加山雄三扮する主人公がビルの屋上で冷静に風向きを読んで、淡々と射撃の準備をし、そして走る新幹線の中のある乗客を狙撃する場面に、そのハードボイルド性が全て集約されているのです。 BGMを完全に排し、手慣れた動作で流れるように銃を扱う主人公の動きに、銃を操作する音が効果的に使用され、"狙撃"という孤独な作業が強い説得力を持って、観ている私に迫って来るのだ。 そしてこの映画は、その後の「弾痕」「豹(ジャガー)は走った」「薔薇の標的」と連続して製作されることになる、加山雄三主演の"東宝ガンアクション映画"の幕開けにふさわしい名場面となったのだ。 監督は黒澤明監督の愛弟子で「黒い画集・あるサラリーマンの証言」「白と黒」などのシャープな感覚のサスペンス映画を撮った堀川弘通で、「最も危険な遊戯」「蘇える金狼」の永原秀一のオリジナル・シナリオを映画化。 主人公の松下徹(加山雄三)は、元大学の射撃部の腕前を買われて、一匹狼の殺し屋として暗黒街の仕事をしていた。 ある晩、伊豆で密輸される金塊を強奪する仕事を依頼され、襲撃に成功する。 しかし、敵方が雇った殺し屋・片倉(森雅之)は、松下の依頼主を殺し、松下の恋人のファッションモデルの章子(浅丘ルリ子)を人質に、彼をおびき出す。 そして、目の前で章子を殺された松下は片倉と対決することに-------。 加山雄三が若大将の陽気なイメージとは正反対のプロフェッショナルの殺し屋を、意外にも見事に演じていると思う。 終始、仏頂面を浮かべる加山が漂わせる"屈折と倦怠"-------。 恋人の浅丘ルリ子は蝶のコレクターで、幻の蝶を追ってニューギニア行きを夢みる彼女と戯れる舞踊も、彼の鬱屈を満たしてはくれないのだ。 対するベテランの殺し屋に扮した名優・森雅之のダンディなカッコ良さは、もう最高に決まっていて、金髪の愛人サリー・メイを横にはべらせて、余裕たっぷりのキザなポーズも実によくて、風格さえ感じられるのだ。 そして、太陽の照りつける砂丘で展開するラストの1対1の対決が、実にクールで素晴らしい。