
星ゆたか

真実
平均 3.2
2024.2.3 2022年の韓国での「ベイビーブローカー」に先駆け、フランスでの大女優を含めスタッフの元で、作り上げた是枝裕和監督56才の作品。 日本での映画制作現場での働き方や、俳優の演出・対処の仕方など。 度々面喰らう場面も多かったらしい。 最初は楽屋シーンだけの舞台化の話のつもりが。 ジュリエット・ビノシュ(54歳)さんの方から、映画化のお誘いがあり。 主演のカトリーヌ・ドヌーヴ(75歳)さんと共に。 何回も『女優として生きてきた中での“生の言葉”』聞き出して。 脚本に落としてゆく時間を持ったとの事。 撮影は2018年の秋10週間にわたりパリで。 2019年ヴェネチア映画祭のオープニング作品として(日本映画初)上映された。 物語はフランスの大女優ファビエンヌの自伝本「真実」出版祝いの為に。 アメリカで脚本家として暮らしている娘のリュミールが。 TV俳優の夫ハンク(イーサン・ホーク48歳)と娘のシャルロットと共に。 パリの母の住む屋敷(裏に刑務所がある)を訪れる所から始まる。 脚本家の娘としては当然身内の話に触れた書籍の出版だから。 事前に読ませて欲しかったが本音。 早速チェックの黙読をすると。 肝心な母親と同期に女優を目指し、また忙しく家庭を顧みなかった母親以上に。 娘リュミールの世話をしてくれた叔母のサラについて触れられていない事に憤慨する。 しかも彼女の40年前の事故死の原因は母にあると思い込んでいるリュミールは。 『絶対許さない!』と声を荒上げる。 母はサラと役の獲得の奪い合いには『監督と“寝る事”すら厭わない』と。 そういった母と娘の間に隠された“真実”を巡る訪問になる物語だ。 いつもながら是枝監督の〈身内の忖度のない〉日常の流れるような《会話》は、今回も見所で。 また10才位のシャルロットの“おしゃま”な子供の言動も微笑ましい。 祖母がかつて映画で魔法使いの役をやった事があり。 実際に“魔法が使える”と聞いた彼女は、同級生の意地悪な子に魔法をかけて欲しいと耳元で囁く。 しかもここでは、十数年飼っている亀は祖母に魔法にかけられた“誰か”だと聞かされている。 また祖母が“サラの再来”とされる人気若手女優と共演する。 低予算SF映画「母の記憶に」の撮影現場も見学に同行する。 この中で記憶される母親像は年をとらず、娘の方だけ年をとり。 その年をとった娘の役がファビエンヌ。 その過程でのもう一人の娘役の存在が、やや曖昧で。 これならこの途中の人物像を無くして。 むしろ彼女達の核心のサラなる人物像を。 セリフだけで浮き上がらせるのでなく。 このような別の俳優でサラ像を見せた方が良かったのではないかと思った。 そうすればサラの再来と呼ばれた女優と。 大女優、そして娘リュミールの記憶の中のサラ像と。 三つ揃いの核心の人物像がもっと強く、映画の印象にあがったかも。 そして“サラの再来”のプレッシャーを抱える若手女優との共演で。 ファビエンヌが彼女に“親愛”の感情を持てた事(当初は大女優のプライドで批判的)が結果的に。 ファビエンヌと〈サラへの確執〉を抱えるリュミールとの。 《母と娘の和解》のお膳立てになっていったはず。 そして有能な肉親(兄弟姉妹でも)を持つ者の宿命のような“比較”という“確執”で。 才能の上では客観視して、どうしても一般的技量の優劣の思考はあっても。 身内だからこその愛情もやはり根底には。 紛れもなく持っている確認が出来た母娘の。 (改めた)新たなる道が晩秋のパリから始まった。 気持ちのいい幕切れだ。