レビュー
印象的なシーンがある。殺し屋、そして銃調整屋である主人公が、ボスから渡された携帯電話を早々と捨てるシーンだ。 この行為自体が、以後のストーリーに及ぼす影響は殆ど無い。にもかかわらず、このシーンは、この映画にとってとてつもなく必要だったのだと思う。 ゴルゴ13のような、とてつもなくストイックな一匹狼を描くには、雰囲気を90年代から70年代に戻す必要があったのだ。 つまり、「サムライ」のアラン・ドロン、「ジャッカルの日」のエドワード・フォックス、「メカニック」のチャールズ・ブロンソンあたりを彷彿とさせる主人公なのだと思う。 その証拠に、以後のジョージ・クルーニーの行動は、可笑しくなるくらいアナクロである。 日課である疑問の余地のない筋力トレーニング、これはジムなどで行われるものではなく、まさに前線の兵士のそれである。 銃の調整の注文を受ける時は、隣り合わせたカフェの席で、口頭で、しかも素早く記憶する。メールなどは全く想定してない。 車の廃材を利用するサイレンサー、万力に固定され、鉄ヤスリによる細部の調整、これはコンピューターの計算などで切り出された材料を使用する・・・などはもっての外なのである。 先端に穴を開け、一つ一つスポイトで水銀を流し込む特注弾、これらをキャンデーの缶に入れて、サムソナイトのスーツケースに入れた銃と共に、手渡し・・・、これらのアイテムは、全て70年代といっていいと思う。 そして、娼館のイイ女、これはイタリアの女性でなければならず、主人公の影の部分に惚れていなければならない。 正直、ストーリーなど説明不十分の部分もあり、雰囲気だけの映画だとざくっと言えなくもないのだが、やはり、これらの男臭さ、クールさにしびれるのだ。
いいね 2コメント 0


    • 出典
    • サービス利用規約
    • プライバシーポリシー
    • 会社案内
    • © 2024 by WATCHA, Inc. All rights reserved.