レビュー
硝子細工のように整った顔立ちからは想像もつかないほど、大胆かつ狡猾な行動で周囲の人間を翻弄するクロードを演じたエルンスト・ウンハウワーの存在感が抜群のサスペンスです。 小説というノンフィクションの世界と現実の世界が次第に入り交じってその境界を失い始め、見るものにあらゆる想像の余地を残す点や、劇中のそこかしこに立ち込めるエロティシズムなどは、過去作『スイミング・プール』とかなりの共通点を感じますが、フランソワ・オゾン監督の手腕によって浮かび上がる複雑な人間の心模様に理解しがたい奇妙な感情を覚えながらも、不思議と納得させられる自分がいることに気づかされます。 クロードの描く小説を通じ、背徳感や羨望といった誰しもが持つ負の感情に徐々に虜にされていく ジェルマンを、我々もまた映画のスクリーンという『窓』を通して見ることで、同じように本作の醸し出す世界観にいつのまにか魅了されてしまいます。 他作品と比べてもフランソワ・オゾン監督作としてはかなり分かりやすい構造をしていますし、過去作で退屈を感じた方にも今一度挑戦してみてほしい一作です。
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