レビュー
映像化不可能とも言われたDCコミックスのグラフィックノベル『ウォッチメン』の実写化作品。 ヒーロー、アクション、ミステリー、SF、ドラマ、あらゆるジャンルが混じり合った複雑な物語でありながら、その根底には「正義とは何か」という普遍的かつ重厚なテーマが脈々と流れている。その切り口の鋭さ・掘り下げ方で言えば同じく「正義」をテーマとして扱った傑作『ダークナイト』をも凌ぐほど。何も考えずに楽しめる勧善懲悪なエンタメ作品ではないし、好き嫌いは分かれると思うが、個人的にはヒーロー映画の中でもかなり上位に入る作品となった。 本作に登場するキャラクターたちはほとんどが特殊能力を持たない普通の人間たち(Dr.マンハッタンを除いて)。各々が各々の「正義」に従って「ヒーロー」として活動しているが、「コメディアン」ことエドワード・ブレイクが殺害された事件をきっかけにそれぞれの「正義」に対する価値観の違いが浮き彫りになっていき、ラストではある人物の理解し難い「(その人物にとっての)正義」が皮肉にも果たされてしまう。しかし、それは本当に「正義」なのか。仮に「正義」だとしても、それを無批判に受け入れることができるだろうか。アラン・ムーア(原作者)が問いかけるこの深すぎるメッセージに鑑賞後もしばらく考えさせられた。実はこれは我々「日本人」とも大きく関係する主題なのだが、映画では“それ”を示唆する重要な描写が省かれているため、そこに気付きにくくなってしまっているのが玉に瑕ではある。 本作の視聴後に原作のグラフィックノベルも読んだのだが、やはりこちらも傑作だった。逆に原作を読んだ以上は映画の方の描写不足な点や改変の是非などがどうしても気になってはしまうものの、そこを差し引いても本作は凄い映画だと言えるし、この『ウォッチメン』という素晴らしい作品(原作含め)を知ることができたという点も加味して★4.5とさせていただきます。
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