
cocoa

aftersun/アフターサン
平均 3.6
原題の「aftersun」は「日焼け跡に塗るローション」などの意味。 作中でパパと娘が日焼けした肌にローションを塗り合う姿が印象的。 スコットランド、エディンバラに暮らす11歳のソフィ。 離れて暮らす父親のカラム(ポール・メスカル)と2人でトルコのリゾート地で休暇を過ごす。 思春期に入りたてのソフィ、何かを抱えているようなカルム。 そんな昔のビデオを見返すソフィはその時のパパと同じ31歳になったばかり。 今、改めて思う当時のパパの気持ち。 そんなストーリーです。 この作品、とても余白が多く、観る者に委ねる描き方ですがとにかく余韻が大きい。 トルコで過ごしたあの休暇で確かにパパはソフィを愛してくれた。 裕福ではないが目一杯にソフィを楽しませようとするパパ。 でも時に不穏なシーンが多くなり、海に潜っても浮き上がらないのでは、とか。 夜の海に入って戻らないのでは、など。 ベランダの高い柵に立つ姿、裸で泣き出す背中を映すシーンもたまらなかった。 11歳のソフィに「11歳の時にどんな大人になると思った?」と聞かれ、答えられないパパ。 彼自身が子ども時代から恵まれない暮らしだったのがわかる。 その後もソフィのママと離婚して辛い人生だったのか、詳しくはわからないが想像できた。 トルコのリゾート地ではプールやスキューバダイビングやビリヤード、ゲーム、様々な事でソフィを楽しませてくれた。 でも時に、ステージで一緒にカラオケができなかったり。 バスツアー先でパパの誕生日を祝う歌を周りの人も一緒に歌ってくれる、そんなシーンでさえ本人は辛そうになる。 極めつけは最後のホテルでのダンスシーン。 デヴィッド・ボウイとクィーンのコラボ曲「Under Pressure♪」のシーンが観ていてたまらなくなった。 ソフィを抱き締めながらあの曲の歌詞がリンクして… 「もう一度だけ愛にチャンスを♪」 「これが僕たちのラストダンス♪」 悲しくも一番心に残ったシーンでした。 パパはその後まもなく命を絶ったと思う。 だから31歳になったソフィの表情は物悲しく見えるけど、あの日々の青空は忘れないと思うし、パパが無理して買ってくれたトルコ絨毯を今も大切にしているのだろう。 この作品、何とも言えなくてすぐにリピートしました。 あの時の言葉が見返せば今はわかる。 女性監督のシャーロット・ウェルズ氏の長編デビュー作で自伝的エピソードを映画にしたとのこと。 それはまた悲しい気持ちにもなるけど、愛されたと言うのは確かな記憶。 カラム役のポール・メスカルの繊細な演技が良い。 ソフィ役のフランキー・コリンの演技も素晴らしく、完成した映画を観て「なんでこんなに悲しい作品を作ったの?」と言ったらしい。 何とも言えない余韻をずっと残してくれる、そんな作品でした。