
てっぺい

時計じかけのオレンジ
平均 3.5
【アート社会風刺映画】 映画全体がまるで美術館なアート満載映画。ポップソングに乗せて冷徹さが増す暴行シーンも、キューブリック映画のアイコンであると同時に、当時の社会を風刺した痛烈な暗示である事に気づく。 ◆概要 原作は、アンソニー・バージェスの同名小説。製作・脚本・監督は『シャイニング』のスタンリー・キューブリック。出演は『キャット・ピープル』のマルコム・マクダウェル、『炎のランナー』のパトリック・マギーら。ベートーベンの第9交響曲や、レイプシーンに流れる「雨に唄えば」など、音楽による効果的な演出が随所に見られる。 ◆ストーリー 近未来のロンドン。日々暴力とSEXに明け暮れる不良グループのリーダー、アレックスは、仲間に裏切られて投獄され、攻撃的本能を抑圧する洗脳治療を施されるが―。 ◆感想 社会風刺炸裂のアート映画。唯一無二のアートな世界観に酔いしれながら、主人公は自身の稀有な運命に翻弄されつつ、映画として当時の政治への痛烈な批判もはらんだ、満腹な映画。何より、キューブリックにしか作り得ない、残虐なシーンとキャッチーなポップソングのマリアージュを堪能。 ◆アート アートに精通していなくても分かる、アートの眼福。冒頭の“ミルク・バー”から、“home”看板の作家の家、アレックスの実家に至るまで、製作から約50年経った今でも感じるモダンアートさが素晴らしい。まるで映画を見ながらにして、モダンアートの美術館を訪ねているかのよう。グループの衣装やメイクもしかり、暴行される女性達が皆ある意味グラマラスなのも含めて、映画全体に、独特の空気感と圧倒的な煌びやかさを足せていると思う。 ◆残虐性 不良グループが起こす蛮行。特徴的なのは、暴行にズームしたり血まみれにするなどせず、少しリアリティを外すところ。そこに例の“雨に唄えば”などポップなBGMをあてることで、どこか第三者目線な冷徹さが生まれているし、グループの残虐性が強調されていると思う。同時にそれが、キューブリックワールドのアイコン化にもなっている。 ◆ ◆以下ネタバレ ◆ ◆社会風刺 刑務所で政府による“特別な治療”を受け社会復帰するアレックス。その体への反作用を逆手に取られ、結局政府に利用され、結果的に内なる悪が目覚めてしまうラスト。翻弄されるアレックスの運命もさておき、明らかに当時のイギリス政府や社会への風刺な映画表現。治療の中でアレックスに暴行映像を見せながらベートーベンの第九を聞かせ続けるのは、“雨に唄えば”を歌いながら蛮行に及ぶ以前のアレックスと重なる。つまりどちらも圧倒的に冷徹であり、目的のために手段を選ばない冷酷さ。それを政府に向けてシニカルに暗示させた豊かな映画表現だととれると思う。 ◆ 名作はいつ見てもやっぱり名作。近頃映画づめしてると、映画の解釈の幅もなんだか変わってきてる自分に気づく。映画って見れば見る程奥深さに気づいていけるのが面白い。 午前十時の映画祭にて鑑賞。 ◆キュレート ○キューブリックは、当時マカロニ・ウエスタン音楽で注目されていたエンニオ・モリコーネに作曲を依頼するも断られる。代わりに選ばれた音楽担当が、ウェンディ・カーロス(1939~)。後のキューブリック作品『シャイニング』(80)のテーマも担当した。(http://asa10.eiga.com/2019/cinema/916.html) ○ イギリスで、殺人事件を起こした少年たちが『時計仕掛けのオレンジ』から影響を受けたと証言したことから、キューブリックは、1973年にはすべての映画館で『時計仕掛けのオレンジ』の公開を禁止し、再上映が行われるようになったのはキューブリックが亡くなった1999年である。(https://renote.jp/articles/11286)