レビュー
この監督の過去作は、どれもこれも焦点が定まらない感じで、何をしたいのかも解らなかったし、評論家にそこそこ受けが良いのも全く理解できなかった。 しかし本作は、突然変異の様にきちんと焦点が定まっていると感じる。恐らく、圧倒的に原作の力であろう。 主人公の二人は、過去の犯罪の被害者と加害者であり、お互いに「不幸せになるために」一緒になっている。お互いの欲望をお互いに奪取するかのような、ひたすらな性行為に耽り、生活を共にするという行動により、男は過去の自身の罪を許さず、女の方でも男の罪を許さない・・という、もはや想像を絶する関係である。 このような関係であるから、隣家で起こった幼児殺人(実際に秋田で起こった幼児殺人がヒントであろう)を機に勃発する、この二人にとっての「事件」は至極当然であり、常人には理解できないこの行動を説明するために、映画はこの二人の過去を遡り、それを取材する記者の夫婦関係、それも崩壊寸前の関係をフラッシュする。この構造に唸ってしまった。 ラストで主人公二人と記者夫婦の道行きが示されるが、つまりは、一応は幸せを求めている方は何とかなるようになり、求めていない方は「決心」するということになる。 そういう意味では、真木よう子扮する「かなこ」のハードボイルド映画ともいえると思う。この「女の覚悟」みたいなものに焦点を合わせているのが凄いと思った。
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