レビュー
思いがけず、良かったです。タバコの健康被害に関する訴訟映画は初めて見ました。そんなに遠くない昔の話なのに、タバコ訴訟よりも、『フィラデルフィア』や『ダラスバイヤーズ・クラブ』のエイズ訴訟に馴染んでる自分に驚きました。身体に悪いと知りながら、タバコ大手の7社長がニコチンに習慣性はないと証言してしまう下りは、情けないですね。お金に目がくらむと、何でも有りになってしまう、人間の浅はかさに吐き気を催します。そりゃあ、生きてくためにお金は必要だけど、自分の利益だけを優先してしまう根性は許せないなあ。それでも人間か?と。原発再稼働の問題を連想してしまいます。 タバコ大手のB&W社を内部告発するジェフリー・ワイガンド役にラッセル・クロウ、CBSのドキュメンタリー番組のプロデューサー役にアル・パチーノですから、文句なしの配役でした。ワイガンド氏が自分の人生を犠牲にしてまで戦う姿が美しいです。タバコのことをニコチン配達容器と言ったり、自社の行いをニコチン配達業と呼ぶのは、初めて聞く表現方法で、面食らいました。ニコチンで得られる快楽を化学的に増幅させる方法も、非常に興味深いです。肺へのニコチン吸収が促進され、中枢神経に影響が及ぶと知りながら、利益を優先させてしまう心理は理解し難いなあ。倫理観は失いたくないと思いました。 ワイガンド氏が警鐘を鳴らしてくれなかったら、東京オリンピックに向けて、路上喫煙やら何やら取り締まる動きだって、なかったのかもしれません。冒頭のシーンが微笑ましく好きです。ワイガンド氏の娘さんが喘息の発作に苦しむ時に、「マスト細胞が"ほこりを吸うな"と肺に命令しただけだよ」と父が娘に説明していて、科学者の父親だとこうなるんだなあ、と思いました。彼の家庭が崩壊してしまったことは残念です。アル・パチーノもプロデューサーを辞めてしまいましたしね。正義が勝つために、正直者の人生が犠牲になる点は悲しいです。でもきっと、彼らは納得していて、内面が美しいまま生きていけるのだろうなぁと思います。自分に嘘をつかない美しい生き方に感動しました。
このレビューにはネタバレが含まれています
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