
dreamer

マチェーテ
平均 3.2
ロバート・ロドリゲス監督の「マチェーテ」は、俗悪エクスプロイテーション映画の顔をしているが、それは上辺のお遊びに過ぎない。 観れば分かることだが、娯楽大作の顔をしていながら、基本が出来ていない作品が横行する中においては、稀なくらいに真っ当で、良くできた娯楽アクション映画なのだ。 それと同時に、荒唐無稽を装いながら、実に現代性、社会性のある真面目な映画でもある。 部分的な瞬発力はあっても、全体的な構成力に欠けるロバート・ロドリゲス監督の作品にしては、ストーリーも、構成もかなりまとも。 緩急もあるし、バランスも良い。 そういう優等生的な作品を、ロドリゲス監督に求めるかどうかは別として、これはかなり出来がよい部類の作品になっていると思う。 とは言っても、もちろん、過剰なバイオレンスや無駄なエロ描写に抵抗がなければ、の話である。 まあ、それも想像がつくとは思うのだが、それぞれ「過激バイオレンス」、「無駄エロ」の真似事、ごっこ遊びの範疇であって、たいしたことはないんですけどね。 何しろ、この映画は、俗悪映画2本立てを再現する「グラインド・ハウス」の冗談予告編から発展したスピンオフ(?)なのだから。 だいたい、「グラインド・ハウス」という企画そのものが、低俗映画「風」のごっこ遊びであったわけで、この映画のエログロ描写が「お約束だからやっている」という模倣の域をでないのは当たり前である。 それを腐すより、一緒に笑って楽しむのが吉というものだと思う 主人公のコードネーム「マチェーテ」は、テキサスの日雇い労働者に身をやつしていたメキシコの凄腕麻薬捜査官だ。 不法移民排斥を訴える上院議員(ロバート・デニーロ)の暗殺を強要されるが、それは罠であり、暗殺未遂犯として追われる身になってしまう。 上院議員の周囲には、ドラッグ・マネーに絡んだ陰謀が存在しており、かつて妻子を惨殺した麻薬王(スティーヴン・セガール)や、自警団の男(ドン・ジョンソン)らを敵に回して闘うことになる。 主人公に手を貸すのは、彼が兄と慕うカトリック神父(チーチ・マリン)や影で移民を支援する女(ミシェル・ロドリゲス)、そして女警官(ジェシカ・アルバ)。 追いつめられた主人公だが、虐げられてきた同胞たちと共に「戦争」に挑むことになる。 ストーリーの核に据えられている、米国に流入するヒスパニック系移民を巡る問題は、まさに今そこにある現実であり、洒落にならないところまできている。 この映画も、「マチェーテ」のために、荒唐無稽な話を作ったというよりも、少しだけ誇張された現実の中に「マチェーテ」という荒唐無稽なキャラクターを放り込んだ、というほうが正しいくらいである。 それを思うと、この映画のクライマックスが、「怒りが爆発した主人公の大暴れ」ではなく、「虐げられてきた人々が団結して蜂起」する展開であることも納得がいく。 フィクショナルなキャラクターの活躍で溜飲を下げる段階は、とうに過ぎているということだろう。 そこには、作り手の「同胞」に対する連帯意識とアジテーションが少なからず含まれている、と読み解かなければならないだろう。 トリプル・ヒロイン体制で、一番特をしているのがミシェル・ロドリゲス。 強いばかりか美しく、これまでにない魅力が出ている。 ジェシカ・アルバは、いい役をもらっているが、こういう映画で脱がずにCG処理っていうのが、どうも潔くない。 可愛く魅力的に撮ってもらっているが、やはり株は下がったと言えるのではないだろうか。 また、かつての名子役で人気絶頂のアイドルだったリンジー・ローハンが、見るも無残な役柄・容貌で出演しているが、ここから先、彼女がこのまま身を持ち崩していくのではなく、ドリュー・バリモアの奇跡を再現できるよう祈りたいものだ。