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静かな雨
平均 3.4
宮下奈都さんの原作は既読。 「羊と鋼の森」と同じように文章の美しさが際立つ小説「静かな雨」を、今回は中川龍太郎 監督がデビュー作として手掛けました。 映画のストーリーは原作とは少し違うものの邦画としては満足な一本でした。 脚が麻痺により不自由な行助(ユキスケ)(仲野太賀)は大学の研究員。 ある日、パチンコ店の駐車場で「たい焼き屋」を営む若い女性こよみ(衛藤美彩)と親しくなる。 そして突然こよみが事故に合い、高次機能障害になってしまう。 過去の記憶はあるけれど昨日の記憶が失くなってしまうこよみと彼女に寄り添うユキスケのお話です。 原作も短いせいか、映画でも細かい説明はほとんど入らず。 ユキスケの脚の事も家族の事もノータッチ。 でも静かなピアノのタッチ音を背景に物語はゆっくり進みます。 ユキスケの不自由な歩行のシーン。 研究室では院生の女の子のズケズケ踏み込む無神経な会話。 古い家に暮らすユキスケの日々のシーンなどみていて飽きないです。 石油ストーブにやかんを乗せて暮らせるのは良いな。 ユキスケの家で暮らすようになったこよみが朝になる度に言うのが… 「ここ、ユキさん家?」 「あっ、もう雨やんだんだ。」 毎日、そうだよと答えるユキスケだったがこのシーンは堪らないよね。 こよみが飼っていたリス(その名もリスボン)が死んでしまった後、あちこちから胡桃が出てくるエピソード。 記憶を失うこよみが日々残す付箋と重なるシーンは堪らないです。 でも責めてしまったユキスケの気持ちももっとわかる。 2人が並んで座ってたい焼きを食べたり、夜の月を見るところは印象に残る静かな素敵なシーンでした。 ひとつ言うならば、こよみの母親役で川瀬直美さん登場ですが、台詞や演技が今一つ。 川瀬作品が苦手なせいかそこだけ気になりました。 でも、若手で期待されている中川監督との関係なんだろうな…。 仲野太賀さんはダメ男やうるさい男が多いけど、今作の役は好きです。