
soldum

悪い子バビー
平均 3.5
以前にアプリ内で探したときには無かった気がするんですが…笑 生涯で最も好きな映画の一本。残念ながら国内ではVHSでしか発売されておらず(邦題は『アブノーマル』ダセェ笑)視聴方法に乏しい作品ですがぜひ観てほしい。自分は過去に一度字幕版を観たことがあるので、現在は輸入盤BDを購入してバビー欲を満たしていて、現在最も日本語版のソフト販売を待っている作品。 発達障害で母親に監禁されて育った男がある日突然今まで見も知りもしなかった外の世界に身一つで放り出されるという話で、面白いのはこの導入にも関わらず一般的な意味での「泣ける」ドラマにもサイコスリラー的な話にもなっていない点。 主人公バビーは幼い子供とそう変わらない精神性の持ち主で、関わった人間の良い行動も悪い行動も無邪気に真似ていく。すると今度はコメディのようにも聞こえるのだが、そんな冗談で済むお話ではない。ささやかな疑問がきっかけで猫を猟奇的に殺したり(この時のバビーは「死」を理解していませんが)、その一方で彼を面白がって拾ってくれた音楽仲間たちとステージに立って歌うのを心底楽しんだり、自身の特殊な経験から言語機能に障害のある人の言葉を察して通訳のマネごとが出来たり、誰かを傷つけることも救うことも、自分が楽しむことも無差別に行う。そうしてバビーは少しずつ社会の中で生きることを理解し、その中で自分が何をしていくのかを見つけていく。 泣けるヒューマンドラマでも、背筋凍るサスペンスでもなく、本作は純粋なゼロの状態からスタートした人間が無様にゆっくりと前進していく姿を追った人間讃歌だ。善も悪も知らなかった人間がそんな何もないはずの彼自身の価値観を育て、その価値観に沿って見出したものが美しかったなら、それはきっと、人類の美しさをもう一度信じるきっかけになる。そんな映画。 なんと言っても主人公バビーを演じたニコラス・ホープの怪演が見事。純粋ゆえに狂気的な幼さを持つ男を見事な振り幅の演技で絶妙な説得力を持って演じている。国内ではあまり知名度がない俳優だが、制作国であるオランダではこの演技で94年の映画協会主演男優賞を受賞しており、本作の刺々しくも素朴な人間らしさのある演技がしっかり評価されている。 作品自体も93年のヴェネツィア国際映画祭で審査員特別賞の栄誉に輝いており、単なるイロモノと切って捨てるのは間違い。向き不向きはあるだろうが、映画好きなら一度通っておいて損はない作品だ。