由宇子の天秤
由宇子の天秤
2020 · ドラマ · 日本
153分
(C)2020 映画工房春組



3年前に起きた女子高生いじめ自殺事件の真相を追うドキュメンタリーディレクターの由宇子(瀧内公美)。保守的な製作サイドと衝突することも厭わず、いま世に問うべき問題に光を当てることに信念を持っていた。父・政志が経営する学習塾を手伝いながら、慎ましくも幸せに暮らす彼女だったが、ある日、思いもかけない政志の行動により、由宇子は自身の信念を揺るがす究極の選択を迫られる……。
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あっちゃん
4.0
『火口のふたり』で第93回キネマ旬報ベスト・テン主演女優賞に輝いた瀧内公美主演、『かぞくへ』の春本雄二郎監督が脚本も手がけた社会派ドラマ。 ドキュメンタリー監督の由宇子は、3年前に起きた女子高生自殺事件の真相を追っていたが、ある日、学習塾を経営する父親から明かされた衝撃の事実に、信念が揺るがされていく。 劇伴が全くないドキュメンタリーのような重い作品だが、緊張感あふれ見応え十分。正しさとは何なのか、この作品は最後まで答えを出さない。 瀧内公美のリアルな演技がとても素晴らしく、優しさと厳しさの両面を見事に演じている。彼女は、『茜色に焼かれる』の尾野真千子と主演女優賞を争うかもしれない。
Masatoshi
5.0
久しぶりにちゃんとした大人の映画を観ました。春本雄二郎氏の監督ニ作目だそうですが、とんでもない才能を持った映画人が現れたものです。 扇状的な音楽はおろか、登場人物の心情を表すような音楽もありません。余りに親切過ぎる邦画とは一線画す、こういう映画が観たかったのです。 上手く言い表せませんが、人間を表現しようとするなら、人間を描く事が出来なければなりません。何が真実で何が偽りなのか。それは、必要以上に饒舌な台詞からは決して何も響かないでしょう。 一切の無駄がないこの作品から、まだ邦画にも未来があるように感じました。監督自身による深い脚本と演出の鋭さ。それに応える役者の静かな中に火花を散らす表現能力に5点満点を付けます。本当に満足しました。
Till
3.0
春本雄二郎が監督・脚本を務め、海外でも数々の賞に輝いたドラマ映画。 ドキュメンタリーディレクターの由宇子は常に“真実”に向き合い、“真実”を照らし出すことに最善を尽くしてきた。今回の女子高生いじめ自殺事件も同様、「遺族側」「学校側」どちらかに傾倒するわけではなく、フラットな視点で“真実”のみをあぶり出そうとする。そして事実を捻じ曲げるカットを要求するテレビ局のような、“真実”を隠蔽する者には決まって反発し、それを悪とみなす。彼女は報道する側の人間として理想的な人物であり、本来あるべき姿であると言えるだろう。 しかし、由宇子は父親に関する“ある事実”を知ってしまい、ひどく動揺する。これまで真実を“あぶり出す”側の人間だった彼女が“あぶり出される”側へと急転してしまうのだ。取材する側としていままで自分が貫き通してきた姿勢といざ当事者になったときの自分の行動のズレ。一体どうするのが正解なのか?最善の行動とは何なのか?タイトルの通り、由宇子はことあるごとに自らの“天秤”に掛け、常に最善の“選択”をせざるを得ない状況に陥ってしまう、と同時に観客である我々も自身の“天秤”を試されているかのような感覚に。映画自体も非常にドキュメンタリータッチで描かれているため、リアリティも凄い。自分ならどうするか?一向に答えが出ないまま、やがて事態は複雑化していく。 何が真実で何が嘘なのか分からなくなってくるサスペンス性、そしてちゃんとひっくり返してくる脚本、全編を通してドキュメンタリー風ではあるが、しっかり映画的・物語的な面白さを兼ね備えているのも見事。ただ欲を言えば、もっと由宇子が「葛藤」する描写がほしかった。彼女はサバサバした性格で、意外にスパッと決断しちゃう。本作は物事を天秤に掛ける「葛藤」がテーマなわけだがら、もう少し「悩む」画があってよかった気もする。 内容も重めだし、2時間半と長尺であるので決して気分の良い映画ではないですが、観て損はないと思います。
wishgiver
4.5
衝撃的!そして瀧内公美の演技が神。 なんという作品だろう。 観る者の心をこんなに揺さぶる作品は滅多にない。 もちろん脚本の完成度も素晴らしいし、寄りと劇伴のない極めてタイトな映像もすごいし、自主制作映画として異例のクオリティに驚嘆しました。 そして瀧内公美をはじめとするキャスティングと、この監督ならではの音と構図の見事な表現で、最後まで息をつかせない緊張感で魅せる稀代の傑作。 ---------------------------------------------- それにしても奥が深いタイトルである。 何が正しいのかは一つじゃないし、そこにはいろんな解釈がある。 でもそこに絶対超えられない事実が存在し、それが様々な事態を引き起こす。 絶望的なまでに人間の弱さとそれが引き起こす恐ろしさをエグすぎるほどリアルに描いたその先にある、監督が伝えたい希望や未来は何なのか。 「映画を作る時、問題提起が目的になってはいけない、その先が大事なんじゃないかと思っているんです。問題をどう解決するか、社会がより豊かになるために、どんなメッセージを表現するのかが映画にとって大事なわけです。」と語る春本雄二郎監督。 またしても日本映画界に現れた天才の次作が楽しみすぎる。 2021.11.9@伊勢進富座
星ゆたか
3.0
2022.10.14 由宇子はテレビのドキュメンタリーディレクターだ。 自身の企画で三年前の女子高生いじめ自殺事件を追っている。 自殺の原因である教師との恋愛関係を、学校の対応・マスコミ報道に加え、通信情報の陰湿な拡散に耐えられなかったあたりを念入りに。 被害者の関係者への取材で探っていこうとする意図のもと進められた。 この事件では女子高生の自殺の後、間もなく、“世間の正義の寸断”に押し潰され教師も自殺への道を。 今日のインターネット・スマートフォンの浸透は、〔公〕と《私》の境界線をいとも簡単に踏み・飛びこえて、特に 《個の不満》を正義のナタにすり替えて断裁する力は、凄まじいものがあるらしい。“悪い一刀両断!” その連鎖。 監督春本雄二郎さんの演出と、それに応えた俳優さんの演技が素晴らしい。 冒頭で女子高生の父親を、自殺した河原で娘のリコーダーを吹く姿で。 また営むパン店での取材。父親役は梅田誠弘さん。由宇子さんの話から教師側の立場も理解し、ここで教師の好きだった三色パンを、その母親に差し上げる描写は好き。 またそれを由宇子さんと教師の母親が後に一緒に食べる場面もいい。 この由宇子さんの率先して相手の食べ物をまず『食べていいですか』と言って食べる。この言動は相手と一心同体になる意味で注目点。 さらにこの教師の母親と妹とは、後にも度々自宅を訪ね、それぞれ取材時に双方の信頼関係を築きながら、心の奥の声を聞き出していく。妹の母娘と家族のようにトランプする場面はこちらも嬉しい。ここでも由宇子さんはこの母子と一緒にオムライスを、実に美味しそうに食べる。 この教師側の親族は世間のヤッカミから逃れるために、何回も引っ越しを重ね、まさに息をひそめ隠れるようにして暮らしていた。世の中を騒がせている、“事件”の当事者の現実を想う。 この母親役を丘みつ子さん。妹役は和田光沙さん。 この辺は俳優の見た目の個性に合わせ 丁寧なじっくりした描写。 そしてこの由宇子の所属するテレビ局の、彼女と上層部の方針との違いを表す、例えば会議室の場面では。 テーブルの上の資料を眺める上司が、イスに前に滑り落ちるような座り方で見せる。明らかに物事に番組製作に真摯な態度を持ってない絵柄。横柄なポーズ。 そんな上司が部屋を出ていき、用意された彼女の弁当に、由宇子自身ツバを吐き、出てゆく。この女性の反骨精神を表す演出。 さらにこの後、父親の経営する進学塾の生徒が妊娠。相手は講師でもある父だったという衝撃的展開からなる所では。 娘は父親が塾を辞めたり、全て真実を話そうとするのは、自分が楽になりたいだけだと。それは塾の生徒・父兄あるいは私のやっている仕事まで影響・否定することになると説得。慎重に物事を進めるべきだと。世間の反応は、おそらく自殺に追いやった女子高生と教師の事件と同じように、批判爆発するのは目に見えていると。 娘に悟らされる父親役は、ベテラン光石研さん。それでも娘がずっと塾を手伝ってきたということは、それなりにこんな父親でも愛し認めてきた証拠。 またこれだけの性格・言動を由宇子がかもし出せる要因は、これまでの父親との暮らしの中にあるのだろうし。けして父親だけを責めて済む問題ではない。 そして妊娠して不安な心身の生徒を安心させるかのように、親身になって接する由宇子と、受けるこの塾生徒の態度も実に細やかに。 一例として由宇子が母親(この生徒は母親がいない)や姉のように愛情表現として頭を撫でようとして、しかしそれを中々受け入れない女子生徒。 それにだらしない、時に威圧的なだけな父親かと思ったら、それなりに由宇子さんの優しさに心動かされ、生きようとするこの父親もまんざら棄てたもんじゃない。ここでもこの父親が買ってきた食べ物を三人で口にする。 だからこの娘も後にだんだん心が、由宇子さんと通じ、体をしなだれ寄せ、手を繋ぐようにまでなる。まるで姉や母に甘えるように。 由宇子を演じた瀧内公美さん、女子生徒を演じたのは新人・河合優実さん、どちらも好演。 物語全体として、先行き不安と悲劇要素の強い作品で見ていて辛い映画で、時に鑑賞の足踏みをしたり……。 でもそんななか、ヒロインの由宇子の強くて優しい言動が救いになっています。 また由宇子の『最後に殺されたのか?』の場面。 娘さんを妊娠させたのは私の父。 と告白しその娘の父親の怒りをかう。 その場面を演じた瀧内さんは。その父親に首を絞められ、寝転がった。 その時、見上げた青空の美しさに、涙が止まらなかったと話してました。まさに役と自分がリンクした瞬間だったそうです。 映画では遠くからのロングショットで、私達にはわからない裏話。 人間を人生を取材する仕事の時生じる、 仕方ない「狩猟性」と「収穫性」は。よほどの注意が必要だと、由宇子は劇中語る。 『誰の味方にもなれない。ただ光を当てることは出来る』 他人の人生に分け入ることは、常に生身の人間に触れている“畏怖の念”を忘れてはならないということをこの作品は教えた。 《天秤》とは中央にある〔てこ〕で(善)と(悪)を比較するということ。またはこの映画での正義の裁定。 そしてまたその〔てこ〕とは弱い力で重たいものを動かしたり、微妙な運動を大規模な運動に交換する物理。 大きな目的を達成するための比較的小さくても強力な手段という存在。 つまり由宇子さん達の、真実の記録報道を編集し映画にするということは。 この“てこ”での小さな力・動き・仕事を蓄積することによって。 大きな力・動き・社会に良い影響・拡散する仕組みに変えることでもないか。 題名に込められた意味をそう理解した。
Taul
4.5
『由宇子の天秤』鑑賞。評判に違わず素晴らしかった。自分の瞳には実は映っていないこの世界の真の見方。人が日々問いかけていることであり作家なら安易な語り口でなく挑戦したいテーマ。映画で暗転前に鳥肌が立ったのはいつ以来だろう。自分の天秤としてゆっくり咀嚼し大切に語りあっていきたい。
なでかた
5.0
この映画の満足度は高い。 余韻がすばらしい。 なんとも、いろいろな価値観をくれたのだろうか。 ありがとう!!
cocoa
4.0
まずタイトルから秀逸。 評判通りの作品で、こんな映画を観るとまだ邦画は見捨てられないと改めて思いました。 ドキュメンタリー監督の木下由宇子(瀧内公美)は3年前の女子高生いじめ自殺事件を追っていた。 教師や学校側の責任、さらに過熱するマスコミの責任、そして自分達報道側の制約に苦慮しながら真実をつかみたい一心で遺族と加害者家族を取材する。 そんな時、由宇子にある身内の事件が起きる。 由宇子の信念は…、隠蔽したい気持ちも出てくる中で究極の選択をする…そんなストーリー。 2時間半という長さを感じない見事な構成。 音楽や効果音もなく、ひたすら登場人物の台詞に引き込まれる。 いや、台詞と言うよりまるで演じていないほどの自然な言葉と演技に驚きました。 由宇子役の瀧内公美さん、「彼女の人生は間違いじゃない」以来の光石研さんとの共演かな。 (あの作品から大好きな女優です。) ドキュメンタリーの仕事だけでなく、父親(光石研)が経営する「木下塾」の手伝いもしている由宇子。 事情を抱える生徒もいるが、子どもの気持ちにもさっぱりとした態度で寄り添う。 女子高生の萌(メイ)(河合優実)の妊娠や、家庭の事情にも配慮するのですが。 父親のやったことを聞いた彼女の怒りがリアルだった。 大声を出すことなく不機嫌な顔で現実を考える彼女。 スマホのカメラを向け父親に尋問する姿は報道魂のようなものなのか。 「正論が正解とは限らない」と、保身のための計算も働く由宇子に対して、人間は皆そうだと思った。 萌の友達ダイチに聞いた信じられない言葉。 萌に付き添い、車の中で疑惑をぶつける時に全てが崩れ落ちるような表情の萌。 河合優実さんの視線の動きがうまい。 萌の父親に真実を告げた時、心の中の天秤が正義を選んだのだと思う。 3年前の女子高生の事件でも想像を越えた加害者家族の真実。 それは間違いなく由宇子が寄り添ったから真実が浮き彫りになったと思うが、いろんな意味で誰も報われない。 母親役の丘みつ子さんも好演でした。 すべての役者が見事な演技で素晴らしかった。 重い内容だけど春本雄二郎監督の手腕に驚く。 自分だったらどうするだろう、そんな事を突き付けられた凄い作品でした。
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