
dreamer

뉴욕 광시곡
평균 2.8
この映画「アル・パチーノのリチャードを探して」は、アル・パチーノが長年の夢だったウィリアム・シェークスピアの「リチャード三世」の映画化を、自ら製作・監督・主演で実現させた作品だ。 「リチャード三世」を上演する役者たちの舞台初日までの様子を追いながら、同時に「リチャード三世」のストーリーも描き、更にケネス・ブラナー、ジョン・ギールグッド、ヴァネッサ・レッドグレーヴらのイギリスの名優に、シェークスピア劇についてのインタビューを行なうという斬新な構成になっている。 背は低いけれど、強烈な魅力のあるハリウッドを代表する演技派俳優のアル・パチーノ。 シチリア移民の子としてハーレムに生まれた彼は、ハングリーなサクセス物語を地でいく野心家だが、そんな自分の中にあるコンプレックスと征服欲をシェークスピアの「リチャード三世」に重ねて見せたのが、この映画だ。 「リチャード三世」の自分の中にある弱く醜い部分を押し隠して、巧妙な心理的な策略をめぐらし、じわじわと身近な権力者の気持ちを操り、果ては、それを裏切ってまで自分のものにしていこうとする"姑息なやり方、生き方"は、現実のアル・パチーノ自身と全く逆の方向にあるものだろう。 しかし、コンプレックスを強い力で克服していくストレートな生き方を選ぶことが出来なかったタイプにありがちな、"人間の弱さ"を、見事にリアルな演技で披露して見せてくれる。 ハリウッド・スターが監督も行なうのは、クリント・イーストウッド、ロバート・レッドフォード初め、数多くみられるが、この作品は映画の構成、切り口の斬新さで驚かされる出来栄えになっていると思う。 シェークスピアの戯曲「リチャード三世」を、現代の若者の視点から捉えていくドキュメント・リポートタッチの映像に、古典ドラマを重ねて見せるわかりやすさ、テンポの軽快さが、我々観る者にかなり身近な共感を呼び起こさせると思う。 良心と悪の心の境を決定づける瞬間とはいつなのか? 人間が邪悪な力に魅せられて、とめどもなく悪人そのものに成り下がる、その心の底にあるものは何なのか? 。 この映画は、「マドンナのスーザンを探して」をパロったポップなタイトルになっているように、リチャード三世って誰? シェークスピアを知って何のメリットが? という人にも、身近な話として受け入れられるように作られていると思う。 権力や金銭を手に入れるために、人々を陥れる"悪女もの"は、今まで数多く描かれてきたが、それを男の屈折した姿で描く、"悪男もの"は珍しいと思う。 この映画は、愛されないと思いこんだ醜い男が、正当な努力もせず、支配欲に捉われた、"アンチ・シラノ・ド・ベルジュラック物語"として観たら、面白いかも知れない。