
Till

가재가 노래하는 곳
평균 3.6
ディーリア・オーウェンズの同名小説を原作とするミステリードラマ。 ロッテン・トマトで酷評されてはいたものの、世評は良かったし、原作もアメリカで大ベストセラーになった小説ということで(未読だが)それなりに期待していたのだが、まさかこれほど酷いとは。演出は緩いし、脚本もイマイチだし、全体的にあっさりしてるし、なんだかダメな邦画みたいだった。 ミステリーを前面に押し出しているような予告編だったが、実際はラブストーリーが大半を占める。比率で言えば7:3くらい。別にラブストーリーがメインでも魅力的であれば問題ないのだが、本作のラブストーリーには全く深みがない。出会いもありがち、距離の縮め方も離れ方もベタ。恋愛表現も安直で、登場人物が「愛し合っている」という事実はほぼキスでしか表現されない。「水の中でキス」とか「鳥が舞う中でキス」とかキスのバリエーションはどうでもいいから(しかもダサい)、何かひとつ気の利いたエピソードややり取りを付け足すだけでもっと深みも厚みも出るだろうに、この表現の乏しさには辟易した。この薄くて長いラブストーリーのせいで必然的に法廷シーンの尺は短くなり、法的劇としての面白さは半減。全体的にバランスも悪いと思う。 ストーリーに関しても終始納得いかないところだらけ。最初の兄妹が次々と家を出ていく件の段階から違和感満載。なぜ誰もカイアを連れて行こうとしない?ジョディ以外はカイアのことなんてもう見向きもせずに出て行ってたけど。唯一声かけてきたジョディも結局置いていったわけだし、なんでまだ幼い妹を危険な父親のそばにほったらかすのか。この時点でなんとなくイヤな予感がした。 その他にも、心優しい黒人夫婦は実はなんもしてないやんとか、カイヤはずっと孤独で生きてきたのに意外と敷居は低いんかいとか(ほぼ初対面の男からのピクニックの誘いに乗るあたり)、そもそもなんでカイヤはこんなに嫌われてんの?とかいろいろ気になるところは多いけど、やはり一番悪質だったのは最後の結末だろう。正直全く納得できない安直な結末だったのだが、ここはネタバレなしでは触れられないので【ネタバレ】として後述する。 というように、登場人物の描きこみの浅さ、演出の緩さ、構成の甘さ、すべてが薄っぺらくて、個人的には今年ワーストの作品になってしまいました。 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 【ネタバレ】 この映画の結末は「実は犯人はカイアだった」というところ。しかし、この結末はこの作品がもつメッセージを根本からひっくり返してしまうのではないか? この映画の唯一素晴らしかったシーンは、判決前に弁護士が最後の弁論をする場面。「湿地の女」のレッテルを貼られ、理不尽に虐げられてきたカイア。そんな偏見を裁判に持ち込んではいけない。カイアにはアリバイがあり、検察が主張している仮説はカイヤに対する根も葉もない噂と同じくらい信憑性が低く無理のあるものである。「偏見」ではなく「事実」で判断しなさい。彼の弁論を要約するとこんな感じのものだった。この弁論自体は素晴らしかったし、その結果、カイアが無罪判決を勝ち取ったのも納得。 でも結局カイヤが犯人なのであれば、この弁論は一体何だったのか。陪審員はカイアを「偏見」ではなく「事実」で判断した結果無罪になったのに、カイアが犯人なのだったら元も子もない。それだと結局カイアは偏見通りの人間だったということになってしまわないか。あれだけ素晴らしかった弁護士の訴えも全く見当違いだったことになるし、カイアに寄り添って親身になってくれた弁護士が欺かれていたというのもイマイチ腑に落ちない。 そもそもカイヤが犯人なのであれば彼女は一体どうやってチェイスを殺したのか?恐ろしいことにここの説明が全くない。「カイヤが犯人でした」という事実を掲示しただけで、何の説明もないまま本作は幕を閉じる。検察が言ってたように本当に変装して1時間以内に殺人・証拠隠滅をしたのか?計画的な殺人だったのか?それとも正当防衛的な殺人だったのか?このあたりは完全に放り投げたままでトリックの説明は一切なし。ミステリーとしては許しがたい結末だと思う。 ただ、原作は読んでいないのでよくわからないのだが、もしかするとこの映画は偏見どうこうが本質的なテーマではないのかもしれない。湿地=自然で生き方を学んだ少女が自然に助けられて人間の法をすり抜け、そしてまた自然へと帰っていく。「湿地の女」はその偏見を払拭するのではなく、「湿地の女」として生き抜いた…ということなのだろうか。それなら彼女が犯人でも人間を出し抜いて自然に戻るという展開には納得がいくし、潮が引いて足跡が消えるというのも自然を味方にした感があっていい。でもそれならもっとカイアのしたたかさや狡猾さを強調して、ポール・ヴァ―ホーベンみたいなテイストにした方が痛快だったろうし、むしろサイコホラーに振り切るのもありだったかも。本作はそのあたりが中途半端なのであまり刺さるものがなかったのだと思う。