
星ゆたか

히든 라이프
평균 3.4
2022.1 “歴史に残らないような行為が、世の中の善を作っていく。名もなき生涯を送り、今は訪れる人もない墓にて眠る人々のお陰で物事がさほど悪くならないのだ。”(ジョージ・エリオット)映画のエピローグに語られた詩。 この映画は、監督テレンス・マリックさんが、一人の名もなき人間の生涯を、こうして映像化してくれたからこそ、時と所を経て、初めて知り得た崇高なる人物史蹟である。 オーストリアの1940年代に、戦争追従に自己の信念に背けないとの理由で、頑なに最後まで拒否、妻子を残し悲しい結末を迎える、農夫フランツ・イエーガーシュテッダーさんの生涯の実話の映画。この作品のお陰で、確かに世界中の人達に、こうやって紹介され、考えさせられることで、世の中の善意を深く考えるきっかけになったのである。 しかし、ここまで強固な信念とは? 一人の人間の意識が、どのようにして、そこまで強く創りあげられたのだろうか?‥‥‥ 信仰心?‥‥‥道徳観?‥‥ 何? どうして? まず信仰心からは、どうであろう。でも地元の教会や顔見知りの神父らの描写からでは、その彼の頑なまでの言動の真意は見出だせない。 それでは彼の日常の行動から、何か発見の手掛かりでも‥‥‥‥‥? 劇中、確か二つの何気ない主人公の日常の所作があった。 すでに戦争不協力で、収監されている状況である身の上でのこと。本人も無意識にごく自然に歩行の流れの中である。 列車の中で前にいた婦人の荷物を、客席の上の棚に言葉もなく上げてあげる。 別の場面では、建物の入口に倒れていた、誰の物とも知れぬ杖を立て直おしてゆく。別に誰に言われたからでもなくそれが自然だし、そうするものだと、身に付いているだけだと‥‥‥、言うでもなく あそこは主人公の人間性(純真性)がかいま見れる所で、さりげない描写ではあるが。それだけではないという期待を込めて‥‥。 さらにこの人物の人格形成の謎・解明 のために、想像の枠を拡げてみよう。‥‥‥ まったく話はかわるが、もしかして、 “人間・MVP”の、野球の大谷翔平さんの、16歳の時の目標設定シートの中にあるように、“ゴミ拾いや”、礼儀、感謝、信頼される人間、といった幼い頃からの心がけ、躾というような育ち方、環境によるもの中から生まれた、強固なる信念なのだろうか? というような想像しか、凡人の私には思いつかないが、どうかなっ?。 アメリカ・ハーバード大学哲学部出身のテレンス・マリック監督の思考の中に、 (人間いかに生きるべきか) のそれがありこれは、 信念を貫いて死を受け入れるのか、 死なずに次をどう生きてゆくか考えることなのか。 というその問いかけである。 少なくとも幸運にも死なずにすんでいる(この映画を見られる状況にある)、それは、健康な私達のような人間にかける命題ではなかろうか?